
はじめに
プロフェッショナルなクリエイターのスタジオを訪問し、モニターコントローラー「Oria Mini」の導入デモを行う本企画。
第2回目となる今回は、前回インタビューさせていただいた「二木 元太郎」さんからのご紹介で、コンポーザー/アレンジャーとして活躍されている釣 俊輔(つり しゅんすけ)さんのプライベートスタジオにお邪魔しました。

釣さんは、ポップス系のボーカル楽曲を中心に、作曲・編曲・プロデュースなどを幅広く手掛けられています。このプライベートスタジオを中心に楽曲制作が多いとのことです。
ちょうどMacを更新する時期で、Oria Miniをお試しいただくのにちょうどいいタイミングとのことでした。
居心地の良いプライベートスタジオ
スタジオ部屋にお邪魔すると、スピーカー奥のボックスシェルフや「BTTF」や「スターウォーズ」等の映画ポスター、整然と壁掛けされたギターが目を引きます。


天野: 「今回はデモの機会をいただきありがとうございます!ブログを読んでくださる方のために、簡単な自己紹介をお願いします!」
釣さん: 「釣俊輔です。作曲、編曲、サウンドプロデュースをしています。agehaspringsという事務所に約13年所属していて、3年前からフリーランスとして活動しています。最近ではゆず、MON7Aなど楽曲のサウンドプロデュースなどをしています。」
天野: 「非常に落ち着く素敵な空間ですが、スタジオ機器の配置でこだわっているところはありますか?」
釣さん: 「ありがとうございます。機材に四方を囲まれて窮屈に感じたくないので、自分の正面に必要最低限のものだけ置いています。8畳で窓もある防音室なのでそれなりに広いのですが、ギター類はできるだけ壁に吊るして部屋の空間をより広く使えるように、というのもこだわりポイントではあります。(とにかく窮屈が嫌)」
天野: 「モニターヘッドホンを選ぶときにどういった点をポイントに見ていらっしゃいますか?」
釣さん: 「音に関しては「解像度」「ダイナミクス」「レンジ感」をチェックします。音の鳴りに余裕があり、クリアでナチュラルな、限りなくありのまま鳴ってくれる色付けのないサウンドのものが好きです。音以外の部分では、装着感、重量も重要です。僕は軽すぎるモデルより多少重さがあって頭をホールドしてくれるモデルが好きです。」
天野: 「スタジオの中で一番重宝している機材を一つ挙げるとしたら何でしょうか?」
釣さん: 「難しい質問なので1つと言われると悩みますが、TAGO STUDIOのヘッドホン「T3-01」でしょうか。この数年の作業を振り返ると、モニタースピーカーから音を鳴らして制作することよりも、ヘッドホン作業の時間の方が長いと思います。(防音室なのに!)様々なアーティストの本チャンのMixもこのヘッドホンで行ってきています。解像度が高く、ダイナミクスの表現力もしっかりあり、高域も自然で、60〜80Hzあたりの低域もしっかり鳴ってくれる素晴らしいヘッドホンだと思います。音に変なキャラがついてないのもいい点です。密閉型なのでマイクでのレコーディングのモニターにも最適ですし、プレイヤーの細かい強弱もそのまま表現してくれる解像度の高さです。この数年の仕事を振り返ったときに、1番頼りにしてた機材だなと思います。」
天野: 「ありがとうございます!」
天野 「...あっ!マイクはTLM 49なんですね。」
釣さん 「昔、U87Ai が27万円ぐらいしてた時期に、TLM 49を買ってみたらすごく良くて。」
天野 「良いですよね。U87Ai にあるちょっとハイが刺さる感じがなくて」
釣さん 「癖がないから使いやすいんです。」
機材の共通点と、お花見で見た「Oria Mini」
天野 「釣さんの環境は、オーディオインターフェイスがUniversal Audioの『Apollo X6』、スピーカーが『ADAM A7X』の組み合わせですね。偶然ですが、前回インタビューした二木元太郎さんとも似た機材構成です。」
釣さん 「そうなんですよ!別に『これいいよね』って合わせたわけじゃなくて、買ってたらたまたま一緒だったんです(笑)。Apolloもスピーカーもマイクプリ(AURORA AUDIO)も。」
天野 「ADAMのスピーカーは、特に自宅環境だと判断がしやすいんですよね。スタジオで一番見かけるGenelecとは良くも悪くもキャラが違いすぎて、エンジニアさんには選ばれなかったりもするみたいですけど、ミュージシャンやアレンジャーの人はADAMを高く評価する人が多い気がします。」
釣さん 「確かに、エンジニアさんとミュージシャンの方で好みが分かれる部分はありますね。ちなみに、こないだ元ちゃんの所でお花見した時に、Oria Miniを見せてもらいましたよ。『小っちゃい!』と思って(笑)。「Mini」ってことはこれ、大きいモデル(ORIA)もあるんですよね?」
天野 「そうなんです。大きい方はDolby Atmos用にマルチチャンネル対応版で、そちらが先にリリースされてました。Oria Miniはその中からステレオ用の機能を抜き出したようなモデルですね。」
現在のモニター環境とお悩み「キックの音がポンと伸びる」
釣さんの現在のモニター環境は、オーディオインターフェイスにUniversal Audioの「Apollo X6」、モニタースピーカーに「ADAM Audio A7X」の組み合わせです。
今回はApolloのアウトに刺さっていたHeritage Audioのパッシブモニターコントローラー、Heritage Audio Baby RAMを置き換える形でOria Miniをセットします。

ウルトラワイドタイプのモニターが設置されており、スピーカー間の距離は140cmほど、リスニングポイントまでは100cmほど。
現在のモニター環境の所感についてお話を伺うと、低域の鳴り方に悩みを抱えていらっしゃいました。
天野 「現在の音響環境で、何か気になる部分はありますか?」
釣さん 「実は、180Hzぐらいのところがブーミングしちゃうっていう悩みがあって。本来『ドッ』と鳴るはずのキックが『ポン』って伸びて聞こえちゃって、キックが聞こえない曲もあったんですよ。テーブルの天板に重い物 (ラック) を置いて共振はだいぶ収まって改善はされたんですが、もうちょい下の帯域をクリアにしたいなと思っています。」
とのこと。
どちらかというとTD(トラックダウン)まではせず、プリプロ〜本チャン録りがメインではあるのですが、複数人でモニタースピーカーでチェックする機会も多いので、再生音はもっとこだわりたいとのことでした。
天野 「では早速、SoundIDで測定してみましょう。ソフトウェアのインストーラーはAirDropで送りますね。」
釣さん 「はい、あ、来ました。」
天野 「測定を始める前に、1回Oria Miniを繋いだだけの状態で音がどう変わったか気になりませんか?」
釣さん 「確かに。回線が1個増えてますからね。」
天野 「言っちゃえば、実売5万円のAD/DAが挟まった状態なので、捉え方によってはマイナスじゃないですか。Apolloが高級(30万円オーバー)なI/Oなので。」
(Oria Miniを通しただけのバイパス音を試聴)

釣さん 「なるほど。少し変わりはしますね。ちょっと塊感みたいなのは感じました。」
天野 「本当だ。でもこう聴き比べると値段考えるとOria MiniのDAも優秀ですね。この変化もキャリブレーションされますので、ご安心ください。じゃあ、キャリブレーションしてみましょう。」
Oria Miniのセットアップと音響測定(キャリブレーション)
というわけで早速、SoundID Referenceを使用した音響特性のキャリブレーション(測定)を実施しました。

チュートリアル音声を頼りに、スピーカーの距離やリスニングポイント周辺の測定ポイントを細かく拾っていきます。
最初は37箇所のマイキングポイントに驚いた物ですが、もうすっかり慣れて来ました。今回は15分ほどで測定完了。
測定が完了し、PCの画面に表示された測定結果を見てみると……

釣さん 「お疲れ様でした。なかなかのマラソンでしたね。」
天野 「あ、結果出ましたね。…あー、なるほど。やっぱり100Hzあたりとか180Hzがガッと盛り上がってますね。」
釣さん 「このグラフがカルテ(診療録)ってことですね!さっきスピーカーで聞いてた時も、80〜100Hzあたりがいないな(見えにくいな)って思ってたんですよ。」
天野 「カルテ!上手いですね。本来はここ(0dB)がフラットなラインを表しているので、この結果だと例えば80Hz近辺と一番飛び出ている180Hz近辺を比べると12dB以上も差がありますね。これは確かにディップしている帯域は聞き取りづらいと思います。ディップしてしまった帯域は、ブーストすれば元通り、という訳ではないのですが、周辺のブーストされている帯域がフラットになることでかなり聞き取りやすくなると思います。」
キャリブレーション結果の試聴とインプレッション
測定データをもとに補正プロファイルを作成し、いよいよOria Mini本体にデータを流し込んで試聴していただきます。
Oria Miniは、一度プリセットをロードしてしまえば、PCなしのスタンドアロン状態でもこの補正EQをかけた状態でモニターが可能です。
天野 「では、測定データをOria Miniに読み込んで試聴してみましょう。(ソフトウェア上の)バイパスボタンでオンオフを切り替えられます。」
(聴き慣れた楽曲でオンオフを切り替えながら試聴)

釣さん 「お〜!なるほど!やっぱキャリブレーションするかしないかだったら、やった方がいいですね。」
天野 「ローの安心感みたいなのが違いますね!補正前はベースの倍音部分が強調されて聴こえてたのかもって思いました。」
釣さん 「ただ、100%補正しちゃうとADAMの個性も少し消しちゃう感じもするので、ドライ/ウェットのバランスはもう少しベストな部分を探りたいとは思いました。」
気になっていた100〜180Hz付近のブーミングが綺麗に整理され、見えにくかった帯域がしっかりと見えるようになったようです。
Apollo内部処理 vs Oria Mini経由
釣さん 「気になってたんですけど、Apolloの中にもSoundIDのプロファイルって入れられるじゃないですか。それとOria Miniをかませるのってどう違うんですか?」
天野 「そうですね。正直に言えば、AD/DAの変換回数で言うと、Apolloの中でプロセスした方が工程が少なくなるので間違いなく有利ではあります。Oria Miniをアナログで経由させると、AD変換してプロセッシングしてDA変換するというロスが時間的にも信号的にも微小ながら生じます。」
釣さん 「確かに、今回の比較だと音だけで言えばApolloから直接出した方がよりダイレクトな印象を受けました。」
天野 「そうですね。それと恐らく、DSP内のEQの仕様が完全に同じわけではないと思いますので、かかり具合の違いは出ると思います。」
釣さん 「同じカルテを読んでいても、エンジンが違うだけでも出音が違うんですね。」
天野 「そういったこともあり、Apolloユーザーの方には正直売り込みづらい部分もあるのですが(笑)、Oria Miniならではのメリットとしては、サブウーファーの管理と環境への依存度です。」
釣さん 「ほうほう。」
天野 「Oria Miniには独立したサブウーファーアウトがあって、プロファイルを切り替えるだけで手元でクロスオーバーも含めたON/OFFができるんです。
また、将来Apollo以外のオーディオインターフェースに変えたりしても、Oria Miniを通せば常にある程度のフラットさが担保されます。
あとは今回はデジタルインを活用すれば、DA→ADの変換ロスを半分に減らせる分、差はより縮まると思います。」
釣さん 「なるほど。利便性はすごくありますね。ちなみにApollo用で買うとするといくらぐらいですか?」
天野 「SoundIDのライセンスの他にApollo用のAdd-Onライセンス(約¥16,000-)が必要になります。完全に新規の場合は約¥71,000のようです。」
釣さん 「なるほど。Oria Miniを買う場合は?」
天野 「Oria Miniにはハードとマイクとソフトのフルライセンス付属版で¥75,500-。…と、無理に売り込みに来たわけではないので!(笑) まずはApollo内部での処理も含めて、トライアルでしばらく使ってみてください。」
釣さん 「はい、もう少し試してみて、どうするか決めたいと思います!」
おわりに
今回のデモを通して、キャリブレーションの重要性とその効果をしっかりと体感していただくことができました。
とても素敵な空間で私も落ち着いてデモが出来ました。
釣俊輔さん、今回は貴重な制作スペースにお招きいただき、また長時間にわたるデモにお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

次回のインタビューもお楽しみに!

【~Artist Profile~】
釣 俊輔
2010年〜2023年3月までagehaspringsに所属。2023年4月よりフリーランスの音楽家として活動開始。ゆず、Aimer、スガシカオ、MON7Aら数々のアーティストへの楽曲提供、編曲、サウンドプロデュースを手がけている。
【キャンペーン情報】
AUDIENT & OYAIDE コラボレーション スプリングキャンペーン開催!
開催期間:2026年4月3日〜4月30日
キャンペーン詳細:関連リンク







