
本ブログでは、Hotone Japan で勤務している、プロオーディオ担当スタッフが日頃活躍されているプロミュージシャンのご自宅へ伺い、製品の魅力(今回はAudient Oria Mini です!)を体験していただいたレポートをブログ+インタビュー形式で皆様に共有します。
今回ご登場頂くのはプロギタリスト、二木 元太郎さんです。
ライブ、レコーディング問わず様々なプロフェッショナルな現場で活躍されていらっしゃいます。
一軒家のご自宅は完全にプロクオリティのレコーディング環境がセットアップされています。防音されていない一軒家でありながら妥協の無いアンプ録音を実現しています。
システム図はこの通り。

ギター録音にとても理にかなったシステムです。
まず、メインで作業するコントロールルーム内にはMarshall JVM410 を始め、錚々たるアンプ達が鎮座しています。
廊下を隔てた別の部屋内に後付けの防音ブースが設置されており、その中にBogner の12インチ2発のキャビネットが用意されています。
2発のスピーカーもVintage 30とBlackback という、性格の違う2つのスピーカーユニットがマウントされ、どちらのスピーカーユニットにマイクを立てるのかをチョイス可能。
曲調に合わせてアンプヘッド、スピーカーユニット、マイク(もちろんギター本体も)を様々な組み合わせからスムーズに切り替え可能です。
電源やその他アクセサリーにも拘られて収録されるギターサウンドはシステム上「宅録」ではありながらも一般家屋のクオリティを飛び越えてスタジオ基準のクオリティに到達しています。
弊社取り扱いブランド Ghost Note Audio のサウンドサンプルもこちらで収録させていただきましたので、ぜひお聴きください。
モニタースピーカーはADAM AudioのA7Xを使用しています。

さて!早速Oria Miniをセッティングしていきたいと思いますが、その前に
「リスニング環境で元々のお悩みはありますか?」
と伺ったところ、
「100Hzあたりだと思うんですけど、ローがモワついていて曇る印象がある...」
との事でした。
ローの鳴り方もあり、現在ミックス作業はRNHPで駆動したT3-01によるヘッドホンミックスがメインになっているそうです。
リスニングポジション周辺で音楽を聴かせていただきましたが、第一印象としては「ADAMらしい明るい鳴り方」です。
確かにローの暴れは若干感じるものの、破壊的に大きな癖は特に感じず、一般的には不利と言われることの多い、「正方形に近い間取り」のお部屋にもかかわらず特性は良さそうな第一印象でした。
それでは早速。

Oria Miniはアナログインプット(もしくはTOSLINK In)、アナログアウトプットの仕様ですので、Apollo X6 とA7Xの間にアナログで接続します。電源はUSBバスパワー。
お使いのMacにSonarworksとaudientのWebサイトからそれぞれSoundIDやORIA Control等のソフトをインストールさせていただきました。

一度目 (後述しますがやり直しました) の測定が終了。
ガイド音に合わせてマイクを37箇所分動かしていきます。
位相や時間差でおおよその立ち位置が分かるのか、マイクを動かした通りに画面内のマイクアイコンも移動するのがゲームみたいでちょっと楽しいです。
Oria Miniに測定データをロードして早速試聴。

「あれ?なんか...確かに変わってはいるし、ローの気になってた部分も多少改善してるんですけど、意外に高域中心に効くんですね...」
….あれ?汗
ORIA Control (アプリケーション)のEQカーブを確認してみると、確かに高域がバッサリ行かれてます。
私も聴いてみると
「定位感は改善しているけど、なんというかADAMの良さが消えている...というより効き方が強すぎる...」という感じ。
「補正強度を25%か50%くらいにしてみる?」「測定時のマイク位置が悪かった?」...など、いろいろ考えている時に元さんがふと気づいてくださいました。

「APIのせいだ!!!*」
測定の際にマイクを接続したAPIの明るい特性が測定に反映されてしまっていたんですね。
(ゲインもかなり突いてましたし)
いや〜...ここまでの影響があるとは思わず...。さすがAPIです。
最初に気づかず二度手間となってしまい申し訳ない限りです。
*APIのせいではなく私のせいです。
(余談ですが、逆転の発想で「こういう録り音の時はAPIで強めにプッシュすると良いんだな〜」という気付きになりました。)
というわけで、気を取り直して二度目の測定です。

今度はApollo X6 本体のマイクプリで測定し直します。
このような測定結果でした。

紫色のラインが測定結果です。
最初におっしゃっていた100Hz周辺の濁りが露わになっていますね!
対して緑色のラインが中央ラインを挟んでほぼ対象的な形を取っているのがわかります。
要は「この形でEQを適用させて周波数特性をフラットにしちゃおう!」ということですね。
それにしても元々バランスの取れた非常に優秀な特性のお部屋だったことがわかります。
私はもっと山あり谷ありな測定結果に出くわした覚えが何度もあります。
リファレンス曲で、補正の有り無しと、愛用のヘッドホンで比較しながらチェックして頂いたところ、
「ヘッドホンには出てこない、スピーカーで聴いた時だけ出てくるハイの刺さる部分があったのがちゃんと修正されてる...ということはやっぱりこのヘッドホンが正しかったんだな...」
以前から気になっていた低音の暴れについても、
「低音域が100Hz近辺だけ膨らんでいるように感じていたのもちゃんと補正されていて、低音域全体の聴こえ方が改善した!これはかなりあり」
とのこと。
いやー...無事に真価を発揮した音を聴いて頂けて一安心です。
無事にセッティングも終わり、翌日以降ちょうど次の作業予定も入っていらっしゃるそうでしたので、ぜひそのセッションで使って頂ければということで、その日は撤収となりました。
しばらく使って頂いたのち、改めて簡単なインタビューをさせていただきました。
インタビュー
天野:簡単な自己紹介をお願いします!
元さん:ギタリスト、作編曲家の二木元太郎(ふたつぎ げんたろう)と申します。
天野:普段はどういった活動が多いでしょうか?
元さん:様々なアーティストの方々の演奏のサポートでギターを演奏しつつ、楽曲提供やアレンジをしています。自宅スタジオでのギターレコーディングもたくさんやらせていただいてます。
天野:Oria Miniをお試し頂いてから数日が経ちましたが、その後手応えや感想はいかがでしょうか?
元さん:今まで自宅スタジオのスピーカー環境を信頼できていなかったので基本ヘッドホンで作業してましたが、スピーカーの音がヘッドホンで聞く場合とかなり近づきましたのでヘッドホンを外す機会が多くなりました。スピーカー環境でずっと気になっていた100Hz付近のボヤけが見事に解消され、たまに一人でニヤついてます。
天野:AD/DAとして見た時、Apollo X6との価格差がそれなりにありますが、普段の印象と比べて、Oria Miniの音質自体はどう評価されますか?
元さん:細かい解像度は今までのヘッドホン環境の方が高いと感じてますが(ヘッドホンアンプを通してる影響も大きいと思います)、全体の音像はかなり似ておりとても満足しています。
天野:これまではヘッドホンミックスと伺っていましたが、今後は変わっていきそうでしょうか?
元さん:どうしても細かい部分は密閉されたヘッドホンで聞く習慣がついてしまっていますが、スピーカー環境にストレスを感じなくなったので外して聞く機会が増えると思います。エアーでミックスを聞く大切さを改めて感じてます。
天野:せっかく貴重な機会を頂いたのでスタジオにまつわる質問もさせていただければ幸いです。制作環境の構築でこだわっている部分を教えてください!
元さん:「ギタリストにとって最高の制作環境」を意識してます。防音室でキャビをマイクで録り、カラーの違うマイクプリを場に応じて選び、必要に応じて実機でコンプをかけてます。配線や電圧、電源環境も自分なりにこだわってまして、プロスタジオに負けないギターサウンドを宅録で作れることに重点を置いてます。
天野:一番大活躍している、これは手放せない!という機材はどれですか?
元さん:防音室、でしょうか(笑)って、一見冗談のようですが、キャビをマイキングすることはアンプシミュレーターには絶対再現できない空気感と音の太さ、そしてロマンがあるので、自宅で爆音を出せる環境こそ一番譲れないものだと思ってます。
天野:よろしければ、テレホンショッキング的に次の方をお繋ぎ頂ければと思います!
ぜひご紹介ください!
元さん:大尊敬する作編曲家であると同時に、大の飲み友達でもある釣 俊輔 さんをお繋ぎしたいと思います。
天野:ありがとうございました!
業界標準となっているSonarworksの高精度な補正を、ソフトウェアではなくハードで処理することで、一度補正さえしてしまえば、あとは忘れておける、というのが運用上の大きなメリットです。
また、今回の場合であれば、従来通りApollo側で音量等のコントロールをして頂くのももちろんありですし、ORIA Control自体はiPadアプリやStreamDeck(?!)とも連携しますので、例えばソファで聴きながらiPadで無線でコントロールしてもいいですし。制約が増えずに純粋に幅が広がるのが嬉しいですね。
今回のApollo X6のように、オーディオインターフェイス本体の方が価格的に高い場合、ORIA MiniのAD/DAを挟むことによる劣化が心配な方もいらっしゃると思いますが、高いダイナミックレンジのおかげで特に劣化らしい劣化は感じません。
唯一、最大入力レベルと最大出力レベルは+18dBuとなりますのでお気をつけください。
Apollo X6の最大出力レベルはデフォルトで +20dBu。(最大+24dBu)です。
とはいえ、モニタースピーカー手前でDAの音量をそこまで上げる人は皆無でしょうから、実用上問題は無いかと思います。
正直に言ってしまうと、Apollo にはApollo用のSoundID Add-onがあり、同様の事がApollo I/Oの中で完結しますので、わざわざOria Miniを導入する方は少ないかもしれません。
しかし、Oria Miniを選ぶメリットが無い訳ではありません。
決して小さくない下記の3つの理由があります。
*コントロール性の拡張...先ほども触れましたが、Oria MiniはiPadアプリやStreamDeckに対応しています。
Apollo Twinはモニコンとしても素晴らしいデザインがされていますが、ラックユーザーの場合には、コンソールアプリに切り替える事なく、モニターを手元でコントロール出来るのは結構使い勝手が変わるかと存じます。プレイバック時にプロデューサー的な人にiPadをお渡しするのもありですね。
*別のI/Oの時にも使える... 要は作業環境の移り変わりに関係なく使えるという事ですね。故障や買い替えの時に、変わらずフラットな音で作業出来る。言い変えれば、出音が安定する分、「音や特性」に縛られず、「システム的な相性、機能重視」でインターフェースを選べるようになります。
*サブウーファーが使える...これは人によっては「!!!」となるかもしれません。
Oria Miniは専用のサブウーファー用のアウトが一系統あります。
「SW有りのプロファイル」「SW無しのプロファイル」両方を登録しておくことで、サブウーファーの有り無しが補正込みで一発でコントロール出来るようになります。


一般的なモニターコントロールのSW OUTの切り替えでは、SWとサテライトのクロスオーバーは掛からず、100%整理されたサウンドではなくなってしまう...
サブウーファー自体にバイパススイッチが付いている場合もありますが、SoundID等を使用する場合はSW On-Offの度に都度プロファイル切り替えが必要...となりますから、
これは嬉しい方が多いのでは?!
これはI/OにビルトインされたタイプのSoundIDでは(おそらく)出来ないかと思いますので、サブウーファー環境の方は率直にOria Miniの方がオススメ!と言えます。
Oria Miniのご検討のきっかけになれば幸いです。


二木元太郎(フタツギ ゲンタロウ)
ギタリスト,作編曲家。名古屋生まれ、2〜13歳までアメリカ育ち。
主なライブサポート、及びレコーディングで携わったアーティストやイベント: ANIMAX MUSIX、にじさんじ、FTISLAND、CNBLUE、すとぷり、山下大輝、初音ミク、神山羊、ヒメヒナ、林ゆうき、ワルキューレ、ももいろクローバーZ、AKB48、等
次回予告
それでは、次回はご紹介いただいた 釣 俊輔 様の作業環境へお邪魔してレポートをお届けします!
どうぞお楽しみに〜!







